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鉄道レポート(1) 静岡地区でのロングシートについて

緊急事態宣言の発令を受け、鉄道班も活動を中止しています。しかし、このままではこのブログも更新できないことになります。そこで、新しい更新内容として、鉄道班で創作展などで展示しているレポートや、毎回行っている発表などの内容を一部公開することとしました。班員がどのようなことに興味を持っているのか、どのような発表をしているのか、少しでも知っていただけたらと思います。

今回は、静岡県内でのロングシートについて、考察した内容をまとめようと思います。

 

 

1.静岡県内での車両について

静岡に向かう場合、東京、名古屋、大阪からならば大抵の人は新幹線を使うでしょう。しかし、鉄道ファンの中には、費用を最小限に抑えるために、東京から静岡などの移動は勿論、東京から大阪までの移動にすら在来線(新幹線でない、運賃のみで乗車できる路線)を利用する人もいます。そして、このような人たちは、静岡県内で走っている車両について不平を口にします。静岡県内で使われている車両は、ほぼ全てが、東京の通勤車両と同じ、ロングシートと呼ばれる座席なのです。

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ロングシート(写真は東京メトロ05系)

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静岡県内での主力車両313系2000番台

ロングシートは長時間の乗車には適していない他、目の前に乗客が立つので気分もよくありません。また、混んでいると景色も見にくく、そして何より、旅の気分が出ないという問題があります。

東海道線の場合、列車の走行距離も長く、車両の連結両数も少ないので、混雑することが多々あります。また、通過駅のある列車も少なく、さらに隣を新幹線が颯爽と通りすぎていきます。このような肉体的な問題と精神的な問題が重なって、車両の批判へとつながってしまったのでしょう。

2.ロングシートを使う理由は何か(1)

安い金額で多くの路線をまわりたい人たちにとって、静岡のロングシートは迷惑なことこの上ないものでしょう。ネット上では、JR東海が新幹線に客を誘導したいから、安い金額で長距離を移動したい人を嫌っているから、など、JR東海を批判するような考えをしている人もおり、また、これを発展させて、新幹線以外は雑な扱いだと言っている人もいます。

しかし、これらの理由付けは全て嘘といっていいでしょう。JR東海も、嫌がらせでロングシートを使っているわけではないでしょう。

3.ロングシートを使う理由は何か(2)

ロングシートを導入している理由の一つとして、静岡県内の通勤需要の高さが挙げられます。県庁所在地である静岡へは勿論のこと、三島、沼津、浜松などの各小都市、さらには新幹線に乗り換えて東京、名古屋への通勤も考えられます。ロングシートは、通勤ラッシュの混雑対応には適した座席タイプです。たとえば、転換クロスシート(特急型に近い座席)と比較した場合、ドア付近の収容力はさほど変わりませんが、座席付近の収容力は明らかにロングシートの方が高くなります。さらに、転換クロスシートでは、通路が狭いため、座席付近に人が入らず、ドア付近に人が滞留してしまうという話も聞きます。よって、混雑対策が求められる静岡には、ロングシートが適していたというわけです。両数もたくさん増やせるわけではないので、ロングシート導入は妥当な判断であったといえるでしょう。

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混雑する沼津駅での夕ラッシュ

 

4.ロングシートを使う理由は何か(3)

さて、ここまでで、ロングシートは混雑対策という結論に至ったわけですが、こう疑問に思った方もいるのではないでしょうか。

混雑対策としてロングシートを導入しているのであれば、なぜ名古屋地区は転換クロスシートを導入しているのか。本来、もっと混雑するはずの名古屋地区にこそ、ロングシートを使うべきではないのか。

これについては、以下の2つの理由が考えられます。

1.名鉄線との競合

名古屋地区においては、豊橋~岐阜間で、名鉄という私鉄と競合関係にあります。所要時間ではJR東海が圧倒的に有利ですが、名鉄は特別車を導入しているので、もしも名古屋地区にロングシートを導入したら、快適さを求める人(たとえば、豊橋から金山、名古屋へ通勤する人など)は名鉄か新幹線を利用することになります。しかし、新幹線は限られた駅にしか止まらず、料金も高いため、基本は名鉄一択となります。これでは、JR東海にはお金が入らなくなります。名古屋地区に転換クロスシートが導入されている理由の一つにこれがあるのは間違いないでしょう。

 

2.利用距離の長さ

静岡県内では、熱海から三島・沼津の短距離でも乗車する人もが多く、静岡への通勤でも20km程度しか離れていない藤枝、島田という駅からの利用が多くあります。たとえば藤枝~静岡の距離を別の路線で考えたとき、中央総武線の場合は御茶ノ水西船橋間、小石川の最寄り駅である千石駅から都営三田線東急目黒線で考えた場合は千石~田園調布がこれに近い距離となります。

一方、名古屋地区においては、名古屋に通勤となると、速達列車の場合、岐阜側は大垣で座席が埋まり、豊橋側も岡崎あたりから立っている人が多くいる状態であるということでした。これを先ほどの2路線で考えたとき、たとえば岡崎から名古屋の距離は幕張・御茶ノ水間、大垣から名古屋までの距離は日本大通りみなとみらい線)・千石駅間の距離に相当します。幕張駅から多くの人が立っていて、御茶ノ水まで多くの人が乗っている状態、日本大通り駅で座席が埋まり、千石まで多くの人が乗っている状態を想像してみていただくと、乗車距離の長さが分かるのではないかと思います。このように、乗車距離が長いため、快適性の高い転換クロスシートを導入していると考えられます。

5.ロングシートの利点は何か

ロングシートには悪い点ばかりではないとも言えます。混雑対策になる点は、ロングシートの最大の利点である他、空いていれば、視界を遮るものがないので、景色を広々と眺めることもできます。特に、静岡地区は富士山が綺麗ですので、車窓がよく見えるのも利点の一つだと思います。

6.ロングシートをどうしても避けたい場合

長い静岡県内をロングシートで乗り通すのは大変なのも事実です。どうしてもロングシートを避けたい場合は、新幹線を利用するのが一つの方法です。

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東海道新幹線

しかし、新幹線は使うにはお金がかかります。そこで、新幹線を使う以外には、「ホームライナー」を利用するという方法があります。乗車券以外に整理券を購入する必要がありますが、新幹線よりは遥かに安くすみます。夕刻の列車であれば、沼津から浜松まで一本で移動できる列車も存在します。

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ホームライナー(と313系)

ちなみに、この列車も静岡への通勤・帰宅の時間に合わせて運転されており、このことからも静岡への通勤需要の高さが読み取れます。

7.まとめ

静岡地区のロングシート導入には、通勤需要と乗車距離が比較的短いことが背景としてあり、競合路線がないため、容易に導入できたと考えられます。

8.参考文献

 

ロングシートは快適?静岡の東海道線でロングシートが多い理由。【中央線普通列車の旅】 | 東海道線沿線のそうくんの旅行記 (sokune217.com)

混雑調査東海道線浜松駅土曜休日日中下り (tokaido-unyo-shizuoka.com)

JR東海道線(名古屋地区)の朝ラッシュの混雑、乗車率は何%に!? | たくみっく (takumick.com)

【名古屋地区】JR東海道線の帰宅ラッシュ、混雑と乗車率のレベル | たくみっく (takumick.com)

 

今回の更新は以上となります。最後までご覧いただきありがとうございました。

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